永住外国人の地方参政権について
【質問】
我が国において、平成15年末現在で75万2963人もの永住外国人が生活しています。しかも、その65%以上に当たる50万人弱の人々が、我が国の植民地支配により一旦、日本国籍を付与され、敗戦により今度は一転、本人たちの承諾もなく日本国籍を剥奪された、外国人登録上でいう特別永住者に当たります。本市における特別永住者は、本年5月末現在で4099人です。平成12年4月1日から本年5月末までに誕生した3世、4世にあたる子孫は269名に及び、これからも途絶えることなく誕生してきます。本市での特別永住者の割合は市民全体の0.89%です。全国平均が0.57%なので大きく上回る比率になっています。本会議において、平成7年7月4日、定住外国人への地方参政権の付与を求める意見書が、当時の議員総数48名のうち47名の賛成を受けて採択されています。そして、同様の意見書の採択は、本年1月末時点で全国で1523の地方議会に及んでいます。さらに、国会においても、本年1月17日、永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権の付与に関する法律案が冬柴衆議院議員ほか2名より提出されています。平成11年以来、繰り返し提案されており現在も国会を二分して審議中です。本議会採択の意見書の中には、「定住外国人が真の地域住民として地方参政権を取得することは、国際社会において責任ある地位を占めようとしている」「日本国も批准している国際人権規約のB規約第25条と第26条にみられる「内外人平等」の理念によるところでもある」という表現があり、後輩議員としても、先輩たちの意見に多大なる敬意を表し、賛同いたします。この意見書は上程より10年が経ち、私はこの考え方をさらに推し進め、本市での永住外国人の全国を上回る人口比率から考えて、本市における永住外国人への地方参政権付与を国の構造改革特区へ名乗りを上げてはどうかと考え、そのことについて当局の考えを質問します。
次に、最近、市町村合併や原発誘致などで散見される住民に直接その賛否を問う住民投票についてですが、その住民投票に永住外国人が参加できる条例を持つ市町村は、全国で174に上っています。また、住民投票に限っては18歳以上の投票資格を認めたり、中には16歳以上の参加を認めている地方自治体もあります。市を二分するような大きな問題や市民から湧き上がってくる声に対して、私たち議会だけでなく、住民の直接投票を参考にしていく考え方、住民投票条例の常設化についてどうお考えか、さらに、そのときに永住外国人の参加についてどうお考えかも合わせてお聞かせください。
最後に、さきにも言いましたが、永住外国人の3世、4世が育ってきています。本市での公立の小・中学校に通っている3世、4世は合計で253人います。彼らへの教育的な配慮も不可欠だと考えますが、教育現場での具体的な取り組みもお聞かせください。
【回答/総合企画局】
永住外国人への地方参政権付与に対する構造改革特区への名乗りをあげてなどうか、こういう質問でございます。
ご指摘のように、西宮市議会におきましては、平成7年7月に定住外国人への地方参政権の付与を求める意見書が提出され、採択をされております。また、国会におきましては、これまでに永住外国人に対する地方参政権の付与に関しましては法案が審議されており、現在も議員立法として永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権等の付与に関する法律案が継続して審議されているところでございます。こうした状況の中で、地方参政権付与に関する構造改革特区につきましては、これまでに埼玉県の草加市や広島県三次市などから国に対して申請が出されております。この申請に対し、総務省は、我が国の制度の根幹にかかわる重要な問題でもあり、まずは国会の各党、各会派において充分議論がなされる場合がある、こういう回答を示しておりまして、現在まで申請は認定されておりません。したがいまして、現状ではこの特区の実現性は困難であると考えております。永住外国人の地方参政権の付与に関しましては、国民の総意に基づき国において判断されるべき立法政策にかかわることでございますので、今後の国会の審議を見守ってまいりたい、このように考えております。
次に2点目の住民投票についてどう考えるか、さらに、永住外国人の参加についてもどう考えるのか、こういう質問でございます。
住民投票制度につきましては、市政の根幹にかかわるような重要事項の決定に際しまして住民の意見を総意として把握することを目的とし、間接民主制を補完するものと考えております。国におきましても一般的な住民投票の制度化が課題となっておりますが、住民投票の対象とすべき事項、選挙で選ばれた長や議会との権限との関係、投票結果の拘束力のあり方など、種々の検討すべき論点があり、いまだ成案を得るには至っておりません。一方、合併問題などに関連して幾つかの自治体で住民投票が実施されますとともに、自治基本条例などで住民投票制度を設ける自治体も増えてきております。本市におきましても、市民とともに進める町づくりを一層推進するため、参画と協働の町づくりに関する基本条例を制定することを予定しております。その中で、参画の仕組みの一つとして、住民投票のあり方、またその投票の資格などについて、今後、市民の皆様や市議会のご意見もお聞きしてまいりたい、このように考えております。
【回答/教育次長】
永住外国人の地方参政権問題についての御質問のうち、3点目の永住外国人の3世、4世に対する教育についてお答えいたします。
本市の各学校園におきましては、人権教育推進計画の作成とあわせ、人権教育地区別研修会や人権教育研修などの研修会を通じて、在日外国人教育も含めた人権教育の推進に努めております。在日韓国・朝鮮人にかかわる教育の推進につきましては、平成4年、1992年に指導指針を定め、これに基づいて各学校園へ指導しております。その指導の基本的事項としては、一つ、教師自身の研修、二つ、偏見や差別を生まない学級を基盤とした風土づくり、三つ、本名が使えるような環境づくりへの努力、四つ、発達段階を考慮した調和のとれた計画のもとに全教育活動における展開、五つ、家庭や地域に対する啓発と連携、以上五つを示しております。さらに、平成7年には人権教育研究委員会を設置し、指導指針の具体化を図るために研究してまいりました。毎年、研究のまとめを報告集として各学校園に配布しておりましたが、平成15年には、これまでの取り組みを1冊にまとめ、各学校園での活用を図っております。教育委員会といたしましたは、今後とも各学校園における在日外国人に関する教育の推進に努めてまいります。
【再質問】
平成10年に作成された「西宮市外国人市民施策基本方針〜共に生きるまちづくりをめざして〜」ですが、中に「法体系及びそれに基づく諸制度などにより、外国人市民に適用されていない制度については、国・県などに対して制度改善の要請など働きかけを行う」とあります。この一文は、主に福祉・保健対策について述べられたものです。しかし、広い意味で解釈すると、参政権問題も含まれると思います。特に副題となっている「共に生きるまちづくりをめざして」という表現においても、もし、住民投票条例の常設とか住民投票の実施の際には、永住外国人市民の参加は当然だと考えます。さらに、平成18年にこの兵庫県で開催される第61回国民体育大会、西宮市もヨット、ボクシング、新体操の競技会場になっており、本年度より本市も国体担当部が新設され、対応の準備を本格化しています。そして、この国体から外国籍の選手、監督の参加資格が改定になり、入管法で定める在留資格の永住外国人にも日本国籍を持つ者と同様に参加を認められることになりました。本市がそういった節目の大会の開催地でもあることから、ご答弁のように現状では特区の実現性は困難かも知れませんが、あえて国に対して名乗りを上げてみるには絶好の機会だと思います。埼玉県草加市、広島県三次市、京都府京丹後市に続いて、兵庫県では1番目として、ぜひ前向きに取り組むことを要望しておきます。
次に、永住外国人3世、4世への教育的な配慮や教育現場での取り組みについての質問ですが、教育現場では、在日韓国人・朝鮮人にかかわる教育の推進について、5項目から成る指導指針をもって取り組んでいるとのご答弁です。その中の1、教師自身の研修、2、偏見や差別を生まない学級づくりを基盤とした風土づくり、これすごく大切なことだと思います。もっと言いますと、偏見や差別を生まない学級を基盤とした風土づくりには、教師自身を含めた歴史認識が不可欠だと思います。さきにも言いましたが、永住外国人3世、4世の祖先は日本の植民地政策により、本人たちの意思とは関係なく日本人にされたり外国人にされたりした人々です。さらに、歴史をさかのぼりますと、現在当たり前のように日本国籍を有する私たちも、遠い祖先は大陸からやってきたのです。漢字だって仏教だって遠く海を越えて渡ってきたものです。もっと言いますと、現在、愛・地球博において、アフリカで発見された700万年前のヒトのルーツとされている愛称トゥーマイの頭蓋化石の複製が展示されています。これが私たちの祖先なのです。みんなルーツは一緒なんですということを教師も一緒になって学んでください。そうすれば、偏見や差別がいかに目先の小さな価値観のゆがみから生み出されたものかがはっきりすると思います。このことを現場に強く要望しておきます。しかし、指導指針の5番目の運用については、苦言を呈するとともに、再質問させていただきます。5番目の家庭や地域に対する啓発と連携ですが、現場においては啓発という立場にありながら、教育委員会主催の成人式において、昨年の教育委員長からの20歳になれば選挙云々という表現がありました。この問題は、平成6年12月議会において全く同じ指摘がされております。当時教育長からの答弁ですが、「成人式には外国籍の若者も参加されるわけであり、若者それぞれ一人一人が思いをもたれているという風に思っております。御質問の趣旨を受けとめまして、若者にとってすばらしい思い出の一日となるように今後さらに努めてまいりたいと存じます」というものでした。この答弁から10年が経ち、この答弁の精神が生かされているとは到底思えないのですが、さきの現場の指導指針との整合性はどうなっているのか、質問いたします。
【回答/教育次長】
成人式での教育委員長の式辞にかかわっての御質問にお答えいたします。先程の答弁で、各学校園での在日韓国人・朝鮮人にかかわる教育の推進につきましては、指導指針に基づいて各学校園へ指導しているとお答えいたしました。この指導指針は、教師が子どもの指導に当たっての指針でありますが、教師だけの力では充分でないため、家庭や地域と力を合わせることが重要という意味で、家庭や地域に対する啓発と連携を一つの指針として掲げたものでございます。この指導方針に基づく教育を進めるに当たっては、在日外国人と日本籍者との法律上の差異があることも前提として取り組む必要があると考えております。ご指摘の成人式での教育委員長の式辞は次のようになっております。「新成人としての新年をお迎えになり、おめでとうございます。皆様方が選挙権の行使など新たなる権利を認められるとともに、義務を負われる社会的に自立した人間であることを承認される節目の日を迎えられたとこは、御両親様、御家族のお喜びであるとともに、あなたの成長にかかわられた方々にとっても喜びでありましょう」これが式辞の冒頭の部分でございます。このように、成人として新たな権利が認められる一方で義務を負うという社会人としての自覚を促すためのもので、選挙権を一般的な例として述べたものでございますが、式辞の内容につきましては、今後より一層配慮してまいりたいと考えております。
【要望】
成人式のコメントについて。その後に、痛みのわかる人間になって欲しいとおっしゃってるんですよね。日本の国籍法で、20歳になるまでは自分ひとりで、単独で帰化することもできないんです。2世、3世のお父さん、お母さんが帰化しない限り自分ひとりでは帰化もできないんです。家族全員だったらできますよ。でも19歳の子どもが自分ひとりだけ帰化するということ、国籍法があってできないんです。そういったことも考えていただきたいて、充分配慮していただきたいと思います。
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